abyss ss






食事の支度ができたとの呼びかけに、ルークは弄んでいた剣を傍の木に立て掛け、声のした方へ向かった。
しかし微かに漂う香りに鼻をひくつかせながら野営の中心部に向かえば、待っていたのは異様な空間だった。
いるはずの仲間の姿は誰一人としてなく、声をかけたガイの姿すらない。
あるのはルークの知らないひとりの男の背だった。


「……来たか」


ややくすんだ長い髪をなびかせ、振り返ったのは初老の男性だった。
覚えのない顔に思わず手は腰の剣へと伸びたが、帯刀していないことに気付いて顔をしかめる。後ずさるルークに何を思ったか、相手は無表情だった顔にゆるい笑みを浮かべた。


「安心しろ。敵じゃない」
「敵じゃないって……」


確かに男性からは敵意は感じられなかったが、敵じゃない確証もない。男性が敵だろうがそうでなかろうがおかしな状況であることには間違いなく、ルークはこの後の行動に迷う。
逃げるべきかと考えたが、しかし皆をどこかにやったのが彼である確率が高い以上、それを聞き出さない限り去ることはできなかった。


「みんなはどこなんだ」
「今のお前には見えないだけでちゃんといる。傷だってひとつもついてはいない」
「何だよそれ」


意味が分からない、と気色ばむと、相手はまあ座れと視線で着席を促した。
罠の可能性を危惧して躊躇うが、情報を持っている彼に場の主導権はあった。


「……本当に無事なんだろうな」
「嘘は言わん」


憮然としつつ、ちょうど対座となる岩に腰をかけると、満足そうな笑みが返ってくる。
おもしろくない気持ちを抑えつつ、ルークはおそらくいちばん重要であることを問いかけてみる。


「あんた、一体何者なんだ」


正体がわからないからルークも警戒を解けない。敵じゃないと言うのならそれを告げるに何の支障もないはずだ。
しかし彼は含み笑いをこぼすだけで、その問いには答えなかった。
ただでさえ怪しいというのに、名前すら言えないとなると訝しさを隠せない。答えられないのなら去ることを含ませて立ち上がろうとすれば、片手を上げて制される。


「気が短いな。信じる素振りを見せた矢先にそれか」
「名乗れもしないなんて論外だろ」
「名はそれほど重要か? ―――私たちの関係に名は意味を成さない」


関係、と言われてもルークはこの男性とは今が初対面であり、関係も何もあったものではない。人生のほとんどを屋敷で過ごしていたルークに顔見知りは少なく、当然その中に彼はいない。もしかしたらこの旅で関わったのかもしれないが、それにしては心に残らなさすぎている。
目の前の男性は大きな動作や声の張りはないものの、佇むだけで目を引くような存在感があった。もし彼と出会っていたなら忘れることはまずないだろう。


「関係って何なんだ」


当然の質問だったが、仄めかしたのは彼にもかかわらずこれも首を振って答えを留めた。
唯一返されたのは、懐かしい何かを見るような、目を細めた視線だった。


(―――?)


ふと、懐かしいような不安になるような感覚がルークの胸を突いた。
彼とは面識がないはずなのに、自分はこの目を知っているような気がする。
もしかすると本当に自分とこの男性には何か関わりがあったのだろうかと、ルークもまた探るように男性を見返したが、既視感を思い出すようにしてみても心当たりは全くなかった。

身なりから察するに男性にはそれなりの財力があるらしく、身につけているものは全て貴族のそれだった。家の繋がりの線が濃厚だったが、どうしてもルークには覚えがない。
明るい色の瞳。年齢相応に輝きこそ失いかけてはいるものの、若いころはさぞや映える色をしていただろう長い髪。知らないはずなのに、それでも胸のざわつきは治まらなかった。


「……それで、あんたの目的は? 何かあるから来たんだろう?」
「目的か。そうだな」
「何だよ他人事みたいに。あるならさっさと済ませてくれ」
「そう急くな」


状況からみると、おそらく彼の目的は自分だろう。気が落ち着かないこの場から解放されたくて仕方なかったが、彼はこれもすぐに告げる様子はないようだった。
焦れるルークをよそに彼は傍に拓けている場所へ視線を移し、特に動きもなく小さなテーブルを出現させる。驚きに固まると顎で着席を促された。
テーブルの上には幾品かの料理が並べられており、それらはみな温かいようであった。食欲をそそる香りがルークの鼻をついたが、それを楽しむ余裕などない。
本当に彼は一体何者なのだろう。


「ガイがお前を呼んだ時に作っていた料理だ。食いながらおいおい話してやる」


男性はふたつあるうちの椅子のひとつに腰を掛け、ルークを誘った。
不思議な出来事は最初からなので今更だとルークは自分に言い聞かせ、彼の対面に置かれている椅子に座る。腰をかけると料理が近くなり、注意深くそれを観察してみると彼の言ったようにそれはガイの作ったものである可能性が高かった。覚えのある料理と匂い、もしかしたら味もなのかもしれないが、果たしてこれを口に入れても平気なのであろうか。
そんなルークの心情を察したのだろう、男性は見せつけるように並べられたうちの一品にフォークを突き刺し、口に含んだ。
しかしあちら側の料理は無事でも、こちら側がどうかはわからない。それを危惧して躊躇っていると、彼は可笑しそうに唇をゆがめ、ルークとの席を交換することを提案してきた。


「お前の気が済むなら何でもしてやろう。どうしても食えないというのならそれもいい、好きにしろ」
「……わかったよ」


そこまで言うのなら、とルークは恐る恐るフォークを握りしめる。
まずは先ほど彼が口にしていたものからいこうと、少量を口に含む。異変はないかをよく吟味し、咀嚼したしばらく後も恐れていた苦しみはないとわかると、大きな息が漏れた。あまり詳しいことはわからないが、おそらく大丈夫だろう。
しかしその慎重さも初めだけだった。何回も繰り返し、異変はないことを繰り返すうちにだんだん面倒になり、そう間をおかず普段食べるのと何ら変わりがない動きになっていく。
そうして口に入れた料理の味は確かにガイのものであり、慣れた味がルークの舌をほどよく刺激していた。
見知った味に安堵していると、くく、と漏れるような笑い声が聞こえてくる。


「注意深いのか大雑把なのかわからないなお前は。私が言うのもなんだが、得体の知れない人物の得体のしれない料理を口にするなんて、仮にも王族なら控えるべきじゃないのか」
「なんだよ、あんたが食えって言ったんだろ……って、何、あんた俺のこと知ってるのか?」
「――いや、あまり知らない」
「は?」


ルークが王族であることは城や屋敷の人間以外はほとんど知らないことである。こんな外の地でそれを知っている素振りを見せておきながら「知らない」というのは違和感があった。
言葉の続きを促すと、少し寂しそうな笑いが返ってくる。


「知っていると思っていたんだが、それが間違いだったことに気がついた。だから私は今ここにいる」


冷静だった彼の、初めて見せた感情の揺れは切なさをルークに伝えた。こちらの心も引きずられてしまうようなつらさが言葉にはあった。
彼は自分の何を見てそんな表情を浮かべるというのだろう。


「何か俺に聞きたいことでもある、とか?」
「そうだな……」


そこでいったん言葉を切り、彼は真剣な様子でルークを見た。


「―――お前、今の生は満足か」


突然の問いと、その内容にどくりと心臓がはねた。
直感的に彼は己がレプリカであることを知っていると悟り、ルークの動きが止まる。それを知っているということは、もしかしたら彼はヴァンと繋がりがあるのかもしれない。
しかし今はそれよりも質問の意味が心を揺さぶって仕方がなかった。

ルークの生は自然に受けたものではない。
それに気付かされた時も、今でさえもそうと思うだけで何かに当たりたくなる、認めたくない事実だった。
アッシュの人生を横取るようにのうのうとその場所に収まり、彼の大切なもの全てを奪った。自分の意思じゃないと言い訳はできても、アッシュがぶつけてくる悲しみや憎しみは無視できなかった。
罪悪感と、そしてそれでもひとつの個として生きていたいという願いとを宿す毎日はとてもじゃないが平穏とは程遠い。
生まれてこなければよかった、と何度も思ったことがある。時折アッシュの辛そうな表情を見かけるたびに、自分さえいなければ、とそればかりを考えてしまう。


「満足、なんて……」
「あるはずない、か」
「それは――」


確かにそんなことは一度も、自分がレプリカと知らなかった頃すら思ったことはない。
だがつらいことしかないのかと問われれば、必ずしもそうとは言い切れない。

この旅は、つらいことがほとんどではあるが、ふとした折の仲間とのやり取りや会話に笑顔が漏れることもある。
屋敷の人間のようにやさしく丁寧に接されることはなくても、「自分」を見てくれる彼らに助けられることもしばしばあった。

そして、アッシュがいてくれる。
あれほどまでにルークを嫌悪し、憎んでいた彼が、呼べば応え、手を伸ばせば渋りながらもちゃんと掴んでくれる。
他でもない被験者に存在を認めてもらうこと、受け入れてもらえることがこんなにも安堵するものだとは思わず、今でさえもルークはこれは夢じゃないだろうかと思うことがある。
アッシュがレプリカの存在と過去すべてを消化できずにいることを知っている。だがそれでもはじめのように拒絶をしないアッシュにますます罪悪感を募らせながらも、同じぐらいにルークは喜びを感じていた。
その喜びだけで己の生は幸せだとは断言できないが、生きていてもいいのかもしれないと思えるようにはなった。彼が少しでも自分を必要としてくれるのなら、もうそれだけで生きている意味がある。


「……前はとてもじゃないけどそうは思わなかったし、今もそう感じることは少ない、というか俺なんかが容易に使っていい言葉なのかわからないけど、でも、それでも大切な人が俺を見て笑ってくれたりすると泣きそうなぐらい胸が熱くなるよ」


相手が誰であるかもわからないのに、気づけば本音が出ていた。


「一緒に笑い合える嬉しさを知ったら、生まれてこなきゃよかったなんて言いたくなくなるし、触れ合っているとアッシュ――被験者には悪いかもしれないけど生まれてよかったって思う方が強い時もあるんだ」
「……お前はその”大切な人”と出会えてよかったと思うのか」


一瞬だけ言葉に詰まり、次の瞬間ルークはしっかりと頷いた。


「相手にとってはそうじゃないかもしれないし、俺もたまに迷うし、客観的に見ても俺たちは出会わない方がよかったのかもしれないけど、でも結局はいつも同じ考えに落ち着くんだ。俺はあいつと出会えて、同じ時を生きられてよかったって」


少しだけ表情を翳らせつつも、だが最後にははっきりとした笑みを浮かべるルークを、男性は目を眇めて見た後で静かに顔を伏せた。
長い髪が影を作って表情は見えにくかったが、零れる溜息が少し震えていることにルークは気づく。今の言葉に何かあったのだろうかと思ったが、それを問うことは憚られるほど彼の感情は揺れていた。
彼が自分の話を聞いて何を思ったのか、そしてそれが彼の聞きたかったことなのかはわからない。知りたい気もしたが、おそらく触れない方がいいのだろう。


「―――さて、せっかくの料理だ。完全に冷める前に食べるか」
「そうだな。ガイが作ってくれたんだし」


しばらくの沈黙の後、話題転換だと思われる言葉にルークは素直に従った。
食事を進めながら、ルークはぼんやりと男性を眺める。不思議だった。怪しいも怪しい存在であるのに、時間が経つにつれ警戒心が薄らいでいく。そればかりか興味さえ持ち始めている。
翠の目と視線が合えばやはりその度に何かが心を掠め、胸の奥からじんわり広がる感情がある。だがこの既視感の正体がわからない。
ルークは食事の手を止め、改めて目の前の人物を見据えた。

無駄な動きはなく優雅な手つきで食を進め、姿勢すら正しく、しかし年のせいか、貫禄を感じさせる何かを纏っている。食事の礼儀作法がいいのはやはり彼が貴族だからだろうか。どこにでもあるカップに入っているただの水を飲む姿すら気高いものに見える。
かと思えば、特定の食材を避けるという子供じみた行動も取っており、あまりの似合わなさにルークは思わず笑ってしまった。

彼はルークのことばかりか、こちらの立場のことはほとんどわかっているようだった。ナタリアの出生の秘密やガイの背景なども知っていた時はもはや驚きよりも納得が先立ってしまった。
危惧したヴァンの一味である可能性も、真意のほどはわからないが返されたのは否定だった。そうなるとさらに彼が何者か分からなくなるが、もう誰であってもいいような気さえしていた。
いなくなった仲間のことだけが気がかりだったが、彼によればそう時を待たずに普段通りになるらしい。


「心配しなくても、私が消えればすぐに元に戻る」
「……そうか」


別れをほのめかされ、感じたのは寂しさだった。
相手はこちらを知っているようだが、ルークはこの男性のことを何も知らない。今別れてしまえば、少なくともルークから会う手段はない。何か特別な力を持って自分に会いに来たというなら余計にだ。
心情が外に出ていたのか、彼は笑ってこちらに手を伸ばしてきた。


「すぐにまた会える」


狭いテーブル越しに伸ばされた手はルークの頭を撫でた。
孫にでもするようにゆったりと手を動かし、瞠目するルークの表情を愉しむように彼は笑っていた。穏やかな行為だが、知って間もない相手からでは戸惑いと気恥ずかしさしか感じない。
どうしたものかと顔をうつむけていたルークだったが、しかしあることに思い当たると顔を勢いよく上げ、目の前の男性を見た。

頭を撫でる手つきには覚えがあった。

そんなはずはないと頭が否定するが、彼が髪を撫でる際に見せる、目を細めるしぐさはまさに彼そのものであった。翠の瞳をやわらかい色にし、少しだけ口角を上げて髪に触れる彼がルークは大好きだった。他の誰かと間違えることはない。
そんな、とルークは言葉に詰まる。
自分が知っている彼と今目の前にいる彼とでは年が大分違う。
相手はルークの動揺に気付いてもなお髪を梳く手つきは止めなかった。どうしてもその感覚はルークの知る彼が与えるものと同じで、混乱に首を振る。そしてハッと気づいて彼の皿を見やった。確か避けられていた食材はあの軟体動物ではなかったか。


「あんた―――!」


信じられない思いで彼の名を呼ぼうとしたが、それと同じくして彼の姿が薄れていった。
咄嗟に腕を伸ばしたが、体は実体がないかのようにすり抜けていく。それでも引き留めようとするルークに彼は首を振り、ゆっくりとルークの頬に触れてきた。


「……先ほどお前が言った言葉。”俺”もお前と同じ気持ちだった」
「それは―――」
「お前にはそれを知っててほしい。言えずに後悔するのはもうたくさんだからな」
「待て! 行くな!」
「ちゃんと覚えておけよ」


レプリカ、と、少しの切なさを滲ませながらもとても穏やかに笑う顔が、最後に見た彼の表情だった。





■■■





「―――っ!」


がばりと体を起こしたルークは、一瞬ここがどこなのか分からずに混乱した。
確か今はいつもの逢瀬の途中であり、アッシュに邪険にされたため木陰で拗ねていたところ、あまりにも陽気が気持ちいいものだから昼寝をしてしまったはずだ。
すぐに状況を把握すると、それまで眠っていた余韻を見せずにそばにいるはずの姿を探す。すぐに見つかった姿に駆け寄り、ルークは興奮もあらわにまくしたてた。


「アッシュ、アッシュ!」
「うるせえ」
「夢夢夢! なんか俺すっげえ変な夢見たんだけど!」


うるさいと言われたにもかかわらずに叫ぶと、元からあったアッシュの眉間のしわがさらに深くなった。


「夢の内容なんかでいちいち騒ぐな鬱陶しい。ガキかてめえは」
「だってさ、お前内容が!」
「ああ?」
「だ……、だって……」


そう言えば昼寝前もこうして邪険にされたことを思い出し、ルークは語気も萎えて近づきすぎたアッシュとの距離を少し離す。
そうして少し冷静になると、確かにアッシュの言うようにたかが夢の内容に興奮するのもなんだかな、と時間差で羞恥を感じ始めていた。
年をとったアッシュと会話するなんて、自分はそんな願望でも持っているのだろうか。以前ジェイドから「夢は深層心理の表れだと言った人たちがいたそうですよ」と聞いたことを思い出して首をひねる。もしそうなら自分ながらに変わった欲求だ。

もう一度、ルークは夢の中の男性を思い出してみた。
夢とは不思議なもので、あんなに強烈だったのにもかかわらず、今ではその像がすこし霞みがかってしまっていた。年は明確にはわからなかったが、今のルークに祖父がいたらそんな年齢だったかもしれない。
短絡的に考えると、少なくともアッシュはその年までは生きるのかもしれない。ということは今自分たちが向かっている敵に打ち負けるようなことはないのだろうと、夢ではあるが勇気づけられる。
身なりだって、王のそれと思えなくもなかった。かなりの希望的な思いではあるが、アッシュがバチカルの王になったのだとすればこんなに嬉しいことはない。


「次は思い出し笑いか、気持ち悪ぃ」


感情が抑えられずににやけていると、それに気づいたアッシュが嫌そうに顔をひきつらせた。
しかし今のルークは機嫌がいいので、二度も邪険にされたことも忘れて三度アッシュの隣に腰を下ろす。


「だって何かいい夢だったからさ」
「夢は夢だろうが。馬鹿らしい」
「夢だっていいんだよ。結構リアルだったし」
「だから―――」
「なあ、どんな夢だった、って聞けよ」


肩を使ってアッシュを軽く押しやり、言葉をさえぎる。
案の定アッシュは鬱陶しいという感情をあらわにしたが、ルークはなおもアッシュに縋った。


「ここまでくると少しはアッシュだって何を見たのか気になるだろ?」
「お前の夢なんかでなるか」
「いいから聞けって」
「うぜえ。離れろ」
「嫌だ」
「帰れ」


その後しばらく「聞け」と腕を揺らすルークと、無視を決め込んだアッシュの忍耐戦が続いたが、これはアッシュが不利だった。
なぁなぁと揺らされ続ける体では我慢の限界はすぐに訪れ、舌打ちとともにルークに顔を向ける。


「―――なんなんだお前は」


とても興味があるようには見えず、ついでに言うとかなり嫌そうな表情であり、いかにも無理やり注意を向けさせている感があったが、ルークは満足してにこりと笑った。


「やっぱり教えねえ」


なんとなくではあるが、あの夢の内容を自分の中だけで秘めておこうと思った。
言えば叶わなくなるという願い事の迷信ではないが、それを告げることによってアッシュの中で何かが変わっても困る。それに交わした言葉は軽いものではなかった。たとえアッシュにでも、夢の中の彼が言った言葉を告げるのは微かに抵抗があった。
はじめはルークも包み隠さず言うつもりだったが、冷静にアッシュの顔を見ているうちにそう思った。ならば今までの行動はなんだと言われれば、ほんの悪戯心だ。
しかしこの言葉にアッシュが怒らないはずがない。
すかさず利き腕がルークの前頭部に伸ばされ、握力のままに頭を締め付けられる。
容赦ない痛みに悶えたがアッシュは離す気がないらしく、ぎゃーという叫び声があたりに響いた。

夢の中のアッシュは「知っているようで知らなかった」と言っていた。
そのとき見せた表情を思い出すと、夢といえども胸が痛む。せめて目の前にいるアッシュが夢の年になった時にはそんな顔はさせたくなかった。知らないというのなら教えてやればいい。自分はアッシュとこうしていられて何よりも幸せなのだと、これから嫌というほど伝えてやろう。
だから長生きしろよ、とルークは胸の中で二人のアッシュに話しかけた。
















リク2「アッシュがおじいちゃんになったという夢をルークが見る、夢オチ的な話」でした。

思うところがあって少しぼかした箇所があるので、とにかく解釈はお任せします。さすがにアッシュも年を取ったら少しは落ち着くだろうと思って一人称も「私」にしちゃったんですが、結構違和感ありますね。あとヒゲ、付けるかどうか迷いました。
そんなこんなですが、リクしてくださった方に捧げます。リクエストありがとうございました!

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